CO2ナルコーシスとは?
CO2ナルコーシスって2型呼吸不全の人がなりやすくて、高濃度の酸素は二酸化炭素が余計に溜まってしまうので注意が必要だったりや意識障害やアシドーシスが起こるのは知っていますがいまいち機序などを私がわかっていないのでまとめてみました。
CO2ナルコーシスの定義
CO2ナルコーシスとは高二酸化炭素血症により重度の呼吸性アシドーシスとなり中枢神経系の異常(意識障害)を呈する病態である。
酸素マニュアル
※呼吸性アシドーシスは酸塩基平衡障害の一つで,肺胞低換気により動脈血中二酸化炭素分圧(PaCO2)が上昇しておこるアシドーシスを指す。 臨床所見から低換気が疑われ,動脈血ガス分析でpHの低下,PaCO2の上昇を認めることで診断される。二酸化炭素が体にたまって、呼吸回数が少なくなって体のなかが酸性に傾くこと
CO2ナルコーシスの主な症状
1 .意識障害
2 .高度の呼吸性アシドーシス
3 .自発呼吸の減弱
上記の3つが主症状ですが、その他に頭痛や顔面紅潮や発汗、四肢の不随意運動(羽ばたき振戦)や血圧上昇がある。高二酸化炭素血症になると、末梢臓器等への酸素供給を保とうとして血管を拡張するためその他の症状が起こると思われます。
PaCO2 おおまかな目安 | その他の症状 |
5~10Torrの上昇 | 手のぬくもり |
10~15Torrの上昇 | 発汗 |
15~20Torrの上昇 | 羽ばたき振戦 |
20~30Torrの上昇 | 傾眠 |
30Torr以上の上昇 | 頭痛、昏睡 |
慢性呼吸不全でCO2が高い人は起床時に頭痛や頭重感など出る場合があります。実際にPaCO2が50~60台の人だと朝に頭痛を訴えるひとがいました。けれど注意したいのが慢性呼吸不全の人だと人によって肺高血圧症を合併しているひともいるので注意が必要です。
PaCO2 基準値
正常値は35~45Torr
PaCO2は肺の換気機能および炭酸ガス排泄能を示します。
PaCO2 | |
30Torr以下 | 過換気 |
45~50Torr | 軽度低換気 |
50~60Torr | 中等度低換気 |
60~70Torr | 重度低換気 |
70Torrを超えると換気の増加は頭打ちとなる。
これはあくまで換気の状態を表しています。PaCO2が高いと呼吸を促進するのではないの?って思うかもしれませんがなるわけではなく、低換気だとPaCO2が高い状態(炭酸ガスの排泄能力)、過換気だとPaCO2が低くなっている状態を表しています。
CO2と呼吸調節
延髄にある孤束核が呼吸中枢と考えられており、呼吸のリズムは孤束核により制御され頚髄横隔膜神経核を介して横隔膜を、肋間神経を介して肋間筋を活動させることで呼吸を行っている。
呼吸の調節には神経調節と化学調節の2つがある。化学調節は以下の図のような流れで呼吸を促進させます。
主に日常生活では化学(中枢)受容器(90%)が働いている。末梢化学受容器は多少CO2↑、pH↓を感知はしているが呼吸不全など高度にO2が低下しないと基本的にはあまり働かないのでCO2は換気の指標として言われている
ちなみに化学(中枢)受容器は動脈血中の CO2を直接感知するのではなく.髄液中に入った CO2 が産生する H+の濃度上昇を感知していると考えられている
なんで高濃度の酸素がだめなのか?
2型呼吸不全(PaO2≦60、PaCO2>45)が慢性的に続いてる人(COPDなど)はCO2が高いことに慣れてしまい、反応が鈍くなってしまう。
※ただし、CO2ナルコーシスを予防したいからといって酸素投与を控えて低酸素血症にしてしまってはいけない。
CO2ナルコーシスの治療
まずは低酸素血症の是正が大事!!
底流量のO2投与
⇓
低酸素血症が改善しない場合はO2投与とNIV
⇓
それでも自発呼吸が停止した場合は挿管して人工換気(CO2の排出)
最近では急性増悪などの場合は除いて、慢性的なPaCO2が高い患者(慢性2型呼吸不全)に高流量式鼻カニュラ(high-flow nasal cannula;HFNC)を使用するとPaCO2が若干下がるやNIVと比較してPaCO2も同程度下がるなどの研究が増えてきている。ただ、まだ研究の段階ですね。
まとめ
- CO2ナルコーシスとは高二酸化炭素血症により重度の呼吸性アシドーシスとなり中枢神経系の異常(意識障害)が起きてしまう病態。
- PaCO2は換気の指標
- PaCO2の正常値は35~45Torr(30未満だと過換気、60以上だと重度の低換気となる)
- CO2ナルコーシスの治療は低酸素血症がある場合は低酸素血症の是正して、底流量の酸素から投与。底流量の酸素だと低酸素血症が改善されない場合はNIVや人工呼吸などを使用する。