オーラルフレイルって

2020年1月26日

口腔ケアはすごく大事ですよね.

10年以上前から口腔機能は予防の観点など様々なことで注目されている印象です。

まず、最近オーラルフレイルって言われていますがまずどんなことをいうのか調べてみました。

まずフレイルって?

そもそもオーラルフレイルの前にフレイルとは

 加齢に伴う様々な機能変化や予備能力低下によって健康障害に対する脆弱性が増加した状態と理解される.フレイルは Frailty の日本語訳である.Frailty の日本語訳についてこれまで「虚弱」が使われてきたが,「老衰」「衰弱」 , 「脆弱」といった日本語訳 ,も使われることがあり,“加齢に伴って不可逆的に老い衰えた状態”といった印象を与える.しかしながら,Frailtyには,しかるべき介入により再び健常な状態に戻るという可逆性が包含されているため,Frailty に陥った高齢者を早期に発見し,適切な介入をすることにより,生活機能の維持・向上を図ることができると考えられる.2014 年に日本老年医学会から『フレイル』と呼ぶことが提唱されました。

(日老医誌 2014;51:497―501)

早期に発見して適切な介入をすることで機能の維持・向上が図れることが大事なのではと思います。そのため、国をあげて予防に向けた対策など広くすすめられているのだと思います。

東京大学高齢社会総合研究機構・飯島勝矢 作図

 フレイルは身体的フレイルのことのイメージが未だつよいですが、心理的・認知的、社会的フレイルも概念に含まれており、身体的ではなく社会にまでつなげることが大事なのだと思います。わたしもフレイルと聞くとどうしても身体的なフレイルのイメージしかありませんでした。

 

オーラルフレイルとは

 「老化に伴う様々な口腔の状態(歯数・口腔衛生・口腔機能など)の変化に、口腔健康への関心の低下や心身の予備能力低下も重なり、口腔の脆弱性が増加し、食べる機能障害へ陥り、さらにはフレイルに影響を与え、心身の機能低下にまで繫がる一連の現象及び過程。」

オーラルフレイルは上記のレベルの移行に伴いフレイル、特に身体的フレイルに対する影響度が増大する概念となっています。

オーラルフレイルに関する日本での縦断的研究

Oral Frailty as a Risk Factor for Physical Frailty and Mortality in Community-Dwelling Elderly.  Tanaka T, Hirano H, Watanabe Y, Iijima K. et al.  J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2017

背景:過去の報告書では、フレイルのある高齢者への早期介入により、コストが削減されることが示唆されおり、フレイルとサルコペニアの新たな発症を遅らせることを目的とした効果的な早期予防法が開発することが重要である。包括的に評価された口腔状態と高齢者の身体的フレイル、サルコペニア、長期ケアなどの身体的フレイルとの長期的関連性を調べた大規模な研究はほとんどない。

方法: 千葉県柏市在住の地域高齢者2,044人の被験者(1,013人の男性と1,031人の女性)を対象に45ヵ月間の縦断調査。除外基準はMMSE18点以下で介護保険を利用していて介護を必要としている人。

 

口腔機能検査は5つの歯の状態、8つの口腔機能、3つの主観的困難感を含む16項目で構成されました。

アウトアカムは身体的フレイルとサルコペニアの有無、障害と死亡率、共変量(基本情報やうつスケール、生化学データなど)

結果:口腔機能検査の16項目中で(i)天然歯の数、(ii)咀嚼能力、(iii)「ta」の調音運動能力、(iv)舌圧、(v)固い食べ物を食べることの主観的困難、 (vi)嚥下の主観的困難の6つの3 つ以上で低下がみられる場合をオーラルフレイルと定義した。

 高齢者の転帰リスクに対するオーラルフレイルの独立した45か月の追跡期間にわたって、参加者の3.2%が死亡しました。 Cox比例ハザードモデルは、オーラルフレイルのある参加者がすべての結果を経験するリスクが著しく高いことを明らかであった。 共変量について調整された死亡推定値の生存曲線を上に示し死亡率に有意差があった(ハザード比1.99; 95%信頼区間1.14-3.57; p <.022) したがって、本研究で定義されたオーラルフレイルは、死亡率を含む健康への悪影響の強力な予測因子であった。

結論:この縦断的研究は、多面的な口腔衛生とその蓄積された劣悪な状態が、地域在住の高齢者の死亡率を含む有害な健康転帰を予測できるかどうかを評価した。結果は、口腔機能におけるわずかに悪い状態(オーラルフレイル)の蓄積が、身体的フレイル、サルコペニア、長期ケアの必要性、および死亡率を強く予測することを実証した。

 個人的な見解

 この研究ではlimitationsでも述べているように、一般的な死亡率のみなため死因などは不明であることと、オーラルフレイルの定義も今回の単一集団から定義したものであることがあります。また、この研究は前向きコホートなので、オーラルフレイルと死亡率や身体的フレイルとの関係性は言えますが口腔への介入をしたら死亡率などが下がるとは証明はされていないところは注意が必要だと思います。けれど口腔機能が健康な人と比べると2年で約2倍は死亡率が高まるというのは正直驚くべきことだと思います。口腔機能を保つことが重要になると思いますがそのためにも早期発見が大事となりますかね。

  身体的フレイル同様にオーラルフレイルもしかるべき介入による維持・向上が図れることが目標になっていくでのはと思います。