胸部レントゲン見方   CTRとシルエットサイン

2019年8月3日

今回はCTR、シルエットサインと慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease:以下COPD)等の特徴的な所見を書いていきます。

心胸郭比(cardio-thoracic ratio;CTR)

  • 胸部画像(正面)の心臓と胸郭の比率のことです。
  • 呼吸器疾患でもみることはありますが主には循環器疾患等の患者でチェックすることが多い
  • 以前に書いた通り、撮影条件はチェックを忘れないようにしましょう

心胸郭比=心臓の幅/胸郭の幅×100(%)

ab:胸郭の最大内径  cd:心臓の幅

心胸郭比=cd/ab×100(%)

成人ではCTR50%以下、小児では55%以下が正常 以上だと心拡大と言われています。

ちなみに心拡大心肥大とどちらも聞くと思いますが厳密には違いがあります。

心拡大:心臓が大きいときには心拡大と表現します。 要は心臓が大きくなる

慢性的な前負荷(容量負荷)が増大すると心拡大しやすい

心肥大:心臓に負荷がかかると心筋細胞は細胞を肥大させて適応させます。要は筋肉だ肥大する

高負荷(圧負荷)が増大すると心肥大しやすい

下の図を心臓、真ん中は左室内腔としてイメージしてもらうと拡大は心臓全体が大きくなるため、心臓と内腔も拡大する。肥大は心臓の大きさは変わらないが内腔は正常~狭小化する。

心不全は慢性的に前負荷と後負荷がかかるため最終的には心拡大も心肥大もしてしまう。

シルエットサイン

Ⅹ線像の陰影の濃淡は透過性の差と組織の厚みの違いから生じる。輪郭が不鮮明になった場合をシルエットサイン陽性という。

右第1弓:上大静脈 動脈硬化や高血圧患者で右側へ突出しやすい
右第2弓:右心房 右房・右室拡大で右方へ突出させる。僧房弁疾患などの左房拡大は右房の内側に左房辺縁が観察される(二重陰影)
左第1弓:大動脈弓 大動脈瘤、大動脈解離で拡大。他に高齢者や動脈硬化、高血圧でも軽度拡大する
左第2弓:肺動脈主幹 左→右シャント(心房中隔欠損症)、心室中隔欠損症や貧血による血流増加、肺動脈弁狭窄や肺高血圧で拡大
左第3弓:左心房(左心耳) 通常はほとんど弓として認めない。僧房弁狭窄または閉鎖不全、心不全などの左房拡大で膨隆
左第4弓:左心室 心尖は、大動脈弁狭窄症や肥大型心筋症による左室肥大では拳上し、大動脈弁閉鎖不全症、心室瘤では左下方へ偏位する 僧房弁閉鎖不全症では著名な左室拡大により球状を呈する。右室拡大は左室が後上方に拳上され突出

シルエットサインと肺野の病変部位 

輪郭線が不鮮明部分と肺野の病変部位は下の表になります

輪郭線 病変部位
右心房上部、上大静脈 右上葉前区域S3
右心縁下部 右中葉S5
右横隔膜 右下葉S7~S10
大動脈弓部 左上葉後区域S1+2
下行大動脈上部 左下葉S6
下行大動脈下部 左下葉S10
左心縁上部 左上葉前区域S3
左心縁下部 左上葉舌区S4,S5
左横隔膜 左下葉S8~S10

正面の読影の手順

  • 読影の手順としては上から下へ左右を比較しながら観察する。場合によっては少し離れたほうがよい
  • 主に含気、血管陰影、病変陰影などを確認する
  • 呼吸器・循環器疾患等がなくても数みないとわからないため、繰り返しみるようにしてます。

透過性の違いと疾患例

透過性の低下(暗い)=白く写る 透過性の亢進(明るい)=黒く写る
①含気量の減少例:無気肺

②水・軟部組織の増加

例:胸水、心原性肺水腫、肺腫瘍、肺炎

③虚脱

例:肺門部肺癌、気道異物、無気肺

④拡散障害

例:間質性肺炎、横隔膜神経麻痺、胸水、側弯症

※③、④は上記の疾患により肺の容積が減少するの

に伴い含気量減少するため

①含気量の増加例:COPD、気腫性肺嚢胞、気胸

②水・軟部組織の減少

例:肺血栓塞栓症、乳癌(切除後)

③過膨張

例:COPD、気管支喘息の発作時

COPDの特徴的画像所見

慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患であり、呼吸機能検査で気流閉塞を示す。気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変がさまざまな割合で複合的に関与し起こる。臨床的には徐々に進行する労作時の呼吸困難や慢性の咳・痰を示すが、これらの症状に乏しいこともある。

特徴的な正面画像では大きく分けて過膨張と肺胞破壊の所見がある。

  • 肺野の過膨張

①横隔膜の平坦化(平低化)

②滴状心

③肋間腔の拡大

  • 肺胞破壊

④肺野の透過性亢進

⑤肺野血管陰影の狭小化・消失

胸部画像(正面)の基本はここまでにします。