心不全 ガイドライン2017 総論 自分のまとめ用

2019年8月31日

心不全の定義・分類

なんらかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の大小機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群

LVEFによる心不全の分類

定義 LVEF

LVEFの低下した心不全

HFrEF(heart failure with reduced ejection fraction)

40%未満
LVEFの保たれた心不全
 HFpEF(heart failure with preserved ejection fraction)

50%以上

LVEFが軽度低下した
心不全
HFmrEF(heart failure with mid range ejection fraction)
40%以上50%未満
LVEFが改善した心不全
HFpEF improved(heart failure with preserved ejection
fraction, improved)
またはHFrecEF(heart failure
with recovered EF)
40%以上

 

HFrEF

HFrEFの特徴は,半数以上の症例で左室拡大が認められること,ならびに比較的多くの症例で拡張障害も伴うことである.HFrEFの主要な原因として冠動脈疾患があげられるが,わが国においては増加傾向にあるとはいえ,その比率は諸外国に比較すると依然として低く,拡張型心筋症など心筋疾患の関与を考えることも重要である.

HFpEF

臨床上心不全症状を呈する症例の約半数がLVEFが正常,もしくは保たれた心不全である.HFpEFの原因としては,心房細動などの不整脈や冠動脈疾患,糖尿病,脂質異常症などもあげられるが,もっとも多い原因は高血圧症である

しかし,三尖弁疾患や肺動脈性肺高血圧症に伴う純粋な右心不全の病態はHFpEFと分類されること
になるが,上記のHFpEFとは異なる病態であり,注意が必要である.

HFmrEF

LVEFが軽度低下している症例は収縮機能障害もある程度あるものの,実臨床上はHFpEFに近い病態を示
す症例が多い.そのため,諸外国のガイドラインにおいてもこれらの症例群は LVEFが軽度低下した心不全
(HFmrEF),もしくはHFpEF borderlineと定義されている.この群についての臨床的特徴は十分には明らかになっておらず,治療の選択は個々の病態に応じて判断する

HFpEF improved,または HF with recovered EF;HFrecEF

心不全症状を呈した当初はLVEFが低下していたものの,治療や時間経過とともにLVEFが改善する症例群もある.頻脈性心房細動などによる頻脈誘発性心筋症(tachycardia-induced cardiomyopathy)や虚血性心疾患,β遮断薬で心機能が回復した拡張型心筋症などがこの症例群に該当するものと考えられ,左室収縮能,拡張能や心胸郭比(cardiothoracic ratio; CTR),脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide; BNP)が正常化することもある.これらの臨床的特徴や長期予後などにつ
いては予後良好とする報告も散見されるが,いまだ十分な知見が得られていない.この群については今後さらなる研究が求められている.

 

心不全の進展ステージ

「ステージA 器質的心疾患のないリスクステージ」:リスク因子をもつが器質的心疾患がなく,心不全症候のない患者、「ステージ B 器質的心疾患のあるリスクステージ」:器質的心疾患を有するが,心不全症候のない患者を,器質的心疾患を有し,心不全症候を有する患者を既往も含め「ステージ C 心不全ステージ」と定義する.さらに,おおむね年間2回以上の心不全入院を繰り返し,有効性が確立しているすべての薬物治療・非薬物治療について治療ないしは治療が考慮されたにもかかわらずニューヨーク心臓
協会(New York Heart Association; NYHA)心機能分類III度より改善しない患者は「ステージ D 治療抵抗性心不全ステージ」と定義され,これらの患者は,補助人工心臓や心臓移植などを含む特別の治療,もしくは終末期ケアが適応になる

 

心不全ステージ分類とNYHA心機能分類の対比の目安

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心不全の分類

ForresterとNohria-Stevenson分類

 急性心筋梗塞における急性心不全の予後を予測する目的で作成された分類。臓器灌流とうっ血を客観的指標で評価するこのForrester分類は,虚血以外の心不全の病態把握にも有用であるが,観血的測定を前提に作成されたものであり,侵襲度が高い.また,加齢に伴い低下する心係数について年齢補正がされておらず,さらに肺動脈圧・肺血管抵抗などの指標は含まれていないため,慢性心不全患者の重症度分類を行う際,その解釈には注意を要する.そのため,身体所見からより簡便に病態を評価するために最近頻用されている分類が Nohria-Stevenson分類であり,末梢循環および肺聴診所見に基づいた心不全患者のリスクプロファイルとして優れている.

短期期間での死亡例(心臓移植を含む)はProfileCとBに多かった

クリニカルシナリオ(Clinical scenario;CS)分類

明確なエビデンスが確立していない。急性心不全患者の初期収縮期血圧を参考に病態把握し治療を開始するアプローチ法。

心不全の疫学・原因・予後

日本におけるJCARE-CARD(2004~2005年)、CHART-1(2000~2004年)、CHART-2(2006~2010年)心不全大規模登録研究では心不全患者の平均約70歳と高齢であった。HFpEFの割合は50%以上と年々増加している。

JCARE-CARDではHFpEFとHFrEFとの間に全死亡あるいは心不全増悪による再入院率に大きな差はなかった。メタ解析ではHFpEFではHFrEFと比して多少予後両行ではあるが、高齢になると予後の差は縮小するとともに今後は高齢化社会においてHFpEFは増加していくので予後はHFrEFと同等またはそれに準ずるくらい悪いので注意が必要

心不全患者の院内死亡率は約8%と報告されている。また心不全患者の1年死亡率(全死亡)はJCARE-CARD、CHART-1ともに7.3%、JCARE-CARDにおける心不全増悪による再入院率は,退院後6ヵ月以内で 27%、1年後では 35%であり、心不全は再入院率が高いことがわかる.心不全患者の心不全増悪による再入院率・総死亡率も改善傾向

女性は心不全発症時の年齢が高い一方で、男性に比較して予後が良好であるが生涯における発症リスクは5人に1人で変わらない。 CHART-2研究に登録された慢性心不全症例では,男性にくらべて女性で
はLVEFが保持されており,虚血性心疾患の既往頻度が低い一方で弁膜症の頻度が高く,NYHA心機能分類は重症でBNP値が高いことが報告されている。予後に関しては,CHART-2研究では粗死亡率は女性で 52.4/1,000人・年,男性で47.3/1,000人・年とほぼ同等であったが,患者背景で補正すると男性にくらべて女性の予後は良好であった(調整ハザード比0.79)。けれど性差に関しては今後のエビデンスの蓄積が必要。

 

心不全の原因疾患

日本における入院した心不全患者の原因疾患は1位虚血性心疾患、2位高血圧、3位弁膜症。ただしHFpEFでは1位高血圧、2位虚血性心疾患でHFrEFに比べて高血圧の割合が高い

  • 心筋の異常による心不全

虚血性心疾患

 虚血性心疾患、スタニング、ハイバネーション、微小循環障害

心筋症(遺伝子異常を含む)

 肥大型心筋症、拡張型心筋症、拘束型心筋症、不整脈原性右心心筋症、緻密化障害、たこつぼ心筋症

心毒性物質など

 習慣性物質:アルコール、古館員、アンフェタミン、アナボリックステロイド、

 重金属:銅、鉄、鉛、コバルト、水銀

 薬剤:抗癌剤(アントラサイクリンなど)、免疫抑制薬、抗うつ薬、抗不整脈薬、NSAIDs、麻酔薬

 放射線障害

感染性

 心筋炎:ウイルス性・細菌性・リケッチア感染など、シャーガス病など

免疫疾患

 関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎、混合性結合組織病など

妊娠

 周産期心筋症:産褥心筋症を含む

湿潤性疾患

 サルコイドーシス、アミロイドーシス、ヘモクロマトーシス、悪性腫瘍湿潤

内分泌疾患

 甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、褐色細胞腫、副腎不全、成長ホルモン分泌異常など

代謝性疾患

 糖尿病

先天性酵素異常

 ファブリー病、ポンぺ病、ハーラー症候群、ハンター症候群

筋疾患

 筋ジストロフィ、ラミノパチー

  • 血行動態の異常による心不全
高血圧

弁膜症、心臓の構造異常

 ・先天性

   先天性弁膜症、心房中隔欠損、心室中隔欠損、その他の先天性心疾患

 ・後天性

   大動脈弁・僧房弁疾患など

心外膜などの異常

 収縮性心外膜炎、心タンポナーデ

心内膜の異常

 好酸球性心膜疾患、心内膜弾性繊維症

高心拍出心不全

 重症貧血、甲状腺機能亢進症、バジェット病、動静脈シャント、妊娠、脚気心

体液量増加

 腎不全、輸液量過多

  • 不整脈による心不全

 ・頻脈性

   心房細動、心房頻拍、心室頻拍など

 ・徐脈性

   洞不全症候群、房室ブロックなど

急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版) 日本循環器学会 / 日本心不全学会合同ガイドライン

自分のためにガイドラインの総論を忘れないようにまとめました。心臓リハビリ標準プログラムでも心不全の etiology(病因・原因) を同定する(虚血か、非虚血か等)と必須項目として挙げられている。なのでちょっとまとめてみました。