TKAの手術皮切り方法 midvastusとparapatellarとは

2021年1月7日

 TKAは年間10万件以上、手術されている整形外科では多い疾患のひとつです。

 わたしが勤めていた病院でも少ないながらも、手術を行っていました。そのなかで先生からもアプローチ方法をもう少し知らないとっと言われたことがあります。

 そこで今回はTKAのopeのアプローチ方法で日本でも多い、mid-vastusとparapatellarを比較した文献からまとめてみます。

日本でのTKAのアプローチ方法

 人工関節学会が統計をとっており、2018年の初回手術の統計結果では

  • parapatellar 62.17%
  • mid-vastus 26.96%
  • sub-vastus 4.89%
  • QS(Quadriceps sparing)   2.23%
  • lateral 0.83%
  • その他 2.23%
  • 不明 0.18%

 圧倒的にparapatellarが多いですね。次いでmid-vastusでこの二つのアプローチが8~9割をしめています。

parapatellarアプローチってどんな方法

 手術肢位は仰臥位    内反変形患者で最も一般的な方法です。

 parapatellar

 内側膝蓋支帯と内側広筋を切開し、膝蓋骨をかわして膝蓋支帯を切離し、内側広筋と大腿直筋の間を頭尾方向へ展開する方法。

 利点:術野も広いため、手術しやすく手術時間も短くなる傾向がある。この手術の失敗はあまりありませんが、軟部組織の処理もしやすい

  • ほとんどすべての変形に適用
  • 実行が簡単
  • 再置換または肥満患者に最適
  • 多用途で拡張性
  • 大腿四頭筋の一部を追加できる

 欠点:一番切開が大きいため侵襲の範囲も広い。そのため疼痛や炎症・腫脹が長く続く可能性がある。また、内側広筋の付着部を切開するため、内側広筋の回復が他のアプローチと比較すると遅延する可能性がある

  • 皮切が大きい(> 4 cm)
  • 膝蓋骨の脱臼または亜脱臼は、疲労骨折につながる可能性がある
  • 膝蓋骨の無血管性壊死は骨折につながる可能性があります
  • 癒着(特に膝蓋上のう)

mid-vastusアプローチってどんな方法

 手術肢位は仰臥位    parapatellarに次に日本で行われているアプローチ  術前の変形や伸展拘縮(屈曲に制限がある)が強いかたには向かない

midvastus

切開部位はparapatellarと同様に内側膝蓋支帯・内側広筋ですが、内側広筋は斜走繊維沿って切開して膝蓋骨をかわして膝蓋支帯を切離し展開する

 利点:侵襲・術野が狭く、内側広筋の切開も少ないため出血も少ない。内側広筋の回復も理論上はparapatellarよりはやい

  • 大腿四頭筋腱への内側広筋の
  • 膝蓋骨反転により簡単な視覚化
  • 適切な露出をするための膝蓋骨の軽度な外転
  • ROMの改善とVASの痛みの軽減

 欠点:parapatellarより技術が必要。術野が狭いため、軟部組織の処理やインプラントの設置が難しい。屈曲制限や変形がつよい、外反変形の患者の場合は向かない。場合よっては手術時間も長くなってしまう

  • 近位方向に伸ばせない
  • 内側広筋の筋電図の異常(?)
  • 肥満患者および膝屈曲の制限がある患者にはできません
  • コンポーネントの調整が難しい
  • 筋肉の損傷の増加(CPKの上昇)

medial parapatellar VS midvastus 

 medial parapatellarとmidvastusアプローチによる臨床評価を比べてみました。

Tzatzairis,et al:J Orthop. 2018 Jun; 15(2): 459–466

San-Zhong Xu,et al:PLoS One. 2014; 9(5): e95311.

 二つの文献を参考にしました。

KSS

  Knee Society Score(以下;KSS)はTKA 後の臨床指標として、国際的にQOLや満足度に特化した患者立脚型アウトカムを用いた評価法で術後の満足度を含めた検討に用いられている。日本語版もあります。

 術後3・6ヵ月・1年後でもどちらのアプローチでも差はありませんでした。6週間も差はありませんでたが、異質性は高い結果でした。

VAS

 VAS(Visual Analogue Scale) 

  術後2週間後はmedial parapatellaと比較するとmidvastusは有意にVASが低下していました。

 術後3日・6週間・ 3・6か月では差がありませんでした。けれど術後3日目は異質性は高い結果でした。

ROM

 術後2週間後はmedial parapatellaと比較するとmidvastusは有意にROMが改善していた。その他は差はありませんでした。

筋力

 術後3週後に膝伸展筋力がmedial parapatellaと比較するとmidvastusは有意に増加していた。

2つのアプローチ間で、失血、SLR、入院期間、および術後合併症に関して有意差は見られませんでした。

全般的

 術後早期2週間程度ではROMやVASなどはmidvastusが有意に改善しますが、長期的に6か月や1年後になると身体機能やQOLなども2つのアプローチで差はなくなる。

 

まとめ

 今回はTKAのアプローチ方法であるmedial parapatellarとmidvastusを比較してみました。

 とくに術後早期であれば、低侵襲であるmidvastusのほうがVAS・ROM・膝伸展筋力は有意に改善するが長期的にはあまり変わりはないという感じですかね。

 早期には有意だけど、長期的になると変化がなくなってしまうということは退院後などにセルフトレーニングなどが中心になるためリハビリの影響もあるのかもしれませんね。

今回の引用・参考文献