摂食嚥下機能の5期モデルと観察のポイント

2020年8月7日

摂食嚥下機能のメカニズム

嚥下に関わる解剖の理解

ざっくりですが

喉頭蓋(こうとうがい)は、嚥下以外の時は後上方向きになっていますが嚥下運動と共に下向きに倒れ、食物が食道に送られる時に気道に蓋をする役目をします。

梨状窩(りじょうか)は食道の入り口にある左右の袋状の溝のことで、奥舌から喉頭蓋谷に達した食物は左右に分かれてこの梨状窩を通過し、食道に入ります。この図だとわかりづらいのですがここに食物残渣などが残って誤嚥してしまう人も多いです。

摂食嚥下の5期モデル

1.先行期:目で見て食べ物を認識する

 食物の認知と取り込み。目の前の食べ物を視覚や嗅覚で判断し、食べ物を食べ物として認識する時期。何をどのようなペースで食べるかを判断するとともに以前の記憶などや嗅覚や視覚などで味などある程度判断する場合もある。

2.準備期:食べ物を口から入れ、咀嚼する

 食物の咀嚼と口腔内保持、味の伝達。口腔内に食物を送り込み、咀嚼をして、顎、舌、頬、歯を使って唾液と混ぜ合わせて食塊(まとまりがあって柔らかく咽頭を通過しやすい一塊の食物)を形成する時期。

3.口腔期:舌や頬を使い、食べ物を口の奥からのどへ送る

 舌の動きで食塊を咽頭方向に送り込む時期。食塊の奥舌への移送、舌は前方から口蓋に押し付けられ、食塊を咽頭に向け一気に押し込む。

4.咽頭期:脳にある嚥下中枢からの指令で、食塊を嚥下反射によって食道まで送る
   喉頭拳上、舌口蓋閉鎖、鼻咽腔閉鎖、喉頭閉鎖がおこる。咽頭収縮により嚥下圧が形成され、食塊は左右の梨状窩から食道入口部へ達する。食道括約筋は弛緩し、開大して食塊を食道に送る

 嚥下性無呼吸:嚥下終了後は呼気から再開

5.食道期:食べ物を胃へ送り込む

食塊を胃へと送る時期。食道括約筋が収縮して閉鎖されとともに蠕動運動と重力によって食塊の移送が行われる。

プロセスモデル

StageⅠtransport(第一期移送)

捕食後、臼歯部へ移送

咀嚼(processing)

食物を粉砕、唾液と混ぜて食塊形成

StageⅡtransport(第二期移送)

中咽頭の舌背部と喉頭蓋部に集積

食道期

食道入口部を通過し食道へ移送

摂食嚥下障害とは

先行期、準備期、口腔期、咽頭期、食道期のいずれかに障害がみられる場合を摂食嚥下障害という

摂食嚥下障害≠誤嚥

嚥下機能低下の概念

 嚥下機能低下の概念は、加齢による摂食嚥下機能の低下が始まり、明らかな障害を呈する前段階での機能不全を有する状態。

  日本老年歯科医学会より引用

この5期モデルのどこで誤嚥が起こってしまうのか、そのため5期のどこに障害があるのかを評価することが大事だと思う

 

5期モデルから評価のポイント

先行期

①高次脳機能は問題なし?

 ・意識、感情、注意機能、言語機能

 ・全般的認知機能、記憶機能、失行、視空間認知

②身体機能は問題なし?

 ・上肢機能:利用可能な食具、口元までの運搬可否

                 座位能力、全身耐久性

 ・失調症状:口腔・上肢・体幹

 ・喀痰能力:咳払いの力、

       吸引の有無(頻度・痰の性状) 

準備期・口腔期

①歯は大丈夫?

 ・咀嚼機能は問題なし?しっかり噛めている?

 ・義歯の適合具合は?     

②会話の明瞭度は問題なし?

 ・口唇・舌の運動性:「パ・タ・カ」

 ・鼻咽腔閉鎖:鼻声(鼻からの息漏れ)

③口の中に食べ物が残っていない?

④食物が取り込めない?口からこぼれる?

咽頭期

①高齢?

 ・喉頭下垂:拳上範囲の狭小化

②ムセる?ムセない?

 ・嚥下反射の惹起遅延:咽頭感覚の低下

 ・喉頭蓋反転の不完全

  不顕性誤嚥 :誤嚥していてもムセない

         “ムセない=安全“では無い

③食事中、食後の声は変わらない?     

 ・湿性嗄声の有無