リハビリ 症例検討、症例報告の患者やテーマの選択・視点

2020年5月25日

症例検討、症例報告、症例研究は研究のどのプロセスに位置するかですが

図のような位置になりますかね。なので研究活動を進めるにあたってまずは症例検討、症例報告・症例研究から始めるのがとっつき易いのでいいかと思います。

症例報告のいろいろ

症例検討・ケースレポート・症例報告・ケーススタディー・症例研究など様々な言葉がありますが図にまとめるとこんな感じになります。

広義の症例研究では全部を含めますが、狭義(本来はこっちなのか?)ではケーススタディーやケースシリーズなどをいうと思います。

症例検討の意義

  • 個々の人間としての患者に、最適な治療を選択できる能力を育成する
  • 臨床における問題点を把握し、解決していく能力を向上させる
  • 最適な治療に関する知識・技術自体の向上を推進する

簡単に言うとこのような意義があると思いますが大事なのは解決するの能力と知識の向上だと思います。一度症例検討をやってみると調べ方や考え方など様々な能力がつくような気がします。また、症例検討することで他のセラピストも同様な患者を持った場合対応できる利点もあります。

症例検討の展開

個々のセラピストのレベル(知識や技術)に大きく影響される

-免許取得後初期における各病院・施設の卒業研修体制やシステムが重要となる

-個人レベルでの症例検討のみでは限られた結果や解決方法しか得られない恐れがある

-セラピスト部門内の定期的な症例検討会の場に自分の症例を提示して検討することが役立つ

症例検討・報告のエビデンスレベル

 症例報告はEBMの世界ではエビデンスレベルは低いのが事実です。ただ、自分が稀なケースを持った時に調べてもなかなかないのが現状です。なので稀なケースなどはなるべく症例報告をしてもらえるとすごく助かりますね。わたしも稀なケースを調べてもないのが多々あります。また、右図の階層をみるとエビデンスの土台でもあるため非常に重要ではあります。

福井次矢・他(編):Minds診療ガイドライン作成の手引き 2007.医学書院

リハビリに関係する症例報告のカテゴリー・症例の選択

症例報告のカテゴリー

①新しい疾患

②新しい臨床的または公衆衛生学的な結果につながる稀な疾患

③稀な臨床症状や診断学的所見を示す稀ではない疾患

④有害事象や合併症

⑤新しい診断・治療・リハビリアプローチ

⑥稀な障害

症例の選択

▢新規性notable caseがあること

  新しい疾患や稀な障害像を呈する症例

  新しい治療原理・理論の開発に繋がる症例

  現状の治療原理・理論を否定することで、さらに 

  研究を促すことが期待される症例

▢重要な臨床的な教訓lessons from practiceがあること

  失敗から学ぶことがある症例

  予期しなかった経過と因果を示す症例

  意思決定過程が複雑化し、難渋した症例

  有害事象や合併症を生じた症例

などがあります。これは全国や世界的な学術に発表等する場合は上記のカテゴリーは必要ですが職員レベルや地域・都道府県レベルであればこのカテゴリーに当てはまらなくてもいいかと思います。難渋症例はまだありますが有害事象や合併症などの症例報告は未だ少ない印象です。有害事象などを発表するのはなかなか恥をさらすような気もしますが情報共有でき、同じ事象を繰り返さないためにももう少し増えてほしいですね。

症例報告等のテーマの視点

上の症例の選択から

①評価(方法・指標)と経過

②介入による効果判定

 例)新しい介入方法や介入により劇的な変化があったとか

③患者教育および家族援助

 例)糖尿病の患者教育、PICS(Post Intensive Care Syndrome;集中治療後症候群)-F(family)への援助方法など

④臨床管理体制・指導方法

 例)心疾患の患者教育(新たに始めたルーティン化した指導スケジュール)や家族指導

⑤リスクマネージメント

 例)リスクを組織的に管理(マネジメント)し、損失などの回避または低減ができたなど

⑥その他

うまい例が表現ができませんでしたが評価や治療だけの視点だけではないということです。

症例報告・研究のデザイン

研究デザインですが症例報告や症例研究は後ろ向きor前向き研究が主だと思います。

  • 記述的研究(後ろ向き研究)

 -統計学的手法のない記述的な観察研究

 -clinical reasoningの記載が重要

  • 実験的研究(前向き研究)

 -シングルケースデザインによる縦断研究

 -アウトカム(測定指標)の決定が重要

研究デザインに関しては今度書こうかと思いますが以下の図です

研究デザインは研究を行う前に決めておくことが望ましいです。しかし不慣れな場合は初めから意識するのではなく、Clinical Question(CQ)を自由に決めてから計画とともにデザインと照合するといいではと

 

あくまで、ここまで書いたのは稀な症例などをすすめていますが地域や都道府県内の学術集会等であればどんな症例でも積極的に発表していきましょう。私見ですが質が大事とも言われていますが数もないのに質がどうこうではないと思うので。前は理学療法士協会での新人プログラムを終了するためには発表が必須でしたが今はなくなってしまいまいたが、できれば症例発表でもいいのでできれば挑戦してみるといいかと思います。職場に先輩がいる方は先輩に頼っちゃいましょう。けれど一人職場なども多いのでその場合は学校の同期などこの仕事はつながりが大事だと思うので恥ずかしがらず連絡をとってみましょう。

症例報告の書き方も今後書いていこうと思います。