心臓リハビリテーションのガイドラインが約10年ぶりに改訂

2021年8月16日

 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2021年)が約10年ぶりに改訂しましたね。

 印象として前回2012年版より、よりリハビリテーションの実臨床に近い内容になっています。心臓リハビリテーションをしている人だけでなく、循環器に関わっている方には必携になると思います。

 今回の主な改訂点

1)運動療法に加えて,包括的心臓リハビリテーション実践が日常診療で重要であるという観点から,心理学的介入に加え,栄養と食事療法,患者教育と疾病管理の項目を追加した.

 もともと心臓リハビリテーション学会の「心臓リハビリテーション必携」の本には心理学的介入、栄養や食事療法、患者教育と疾病管理などは含まれていました。近年は栄養・食事療法の重要性は言われており、特に今回は「心不全患者」に対しても記載されておりよりイメージがしやすい内容になっています。

2)高齢心疾患患者が増加してきていることから,基本的な身体能力の評価項目を挙げ,とくに筋力や下肢の歩行能力を重要な評価項目として位置づけ,サルコペニア,フレイルにも言及した.

 近年の心臓リハビリテーションに関する本にはほとんどがサルコペニア,フレイルの内容が記載なしされており、きってもきれない関係になっています。だから当然と言えば当然ですね。

身体能力などの評価項目が具体的に記載されているため、実臨床でのアウトカムを探しやすいのと研究などをする場合にも非常に役に立つかと思います。

3)心不全患者が増加していることから,対象疾患として心不全を挙げ,さらにTAVI術後やデバイス植込み後のリハビリテーション,肺高血圧症や大動脈ステントグラフト内挿術後のリハビリテーションも加えた.

 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)もあるように心不全に対する需要は高まっているのが現状です。

今までは肺高血圧症に関してもエビデンスが少なく、介入方法も曖昧になっていましたがエビデンス少しずつ蓄積されつつあり具体的に介入方法なども記載されています。TAVIなどはわたしの施設では実施していないので勉強になりました。

4)特殊な患者群として,高齢心疾患患者(超高齢者を含む)を独立した項目として挙げ,さらに静注強心薬投与中のリハビリテーション,補助人工心臓(とくに植込型)装着後や心臓移植後のリハビリテーションを全面的に書き換えた.そして,腫瘍循環器学(onco-cardiology)が循環器診療でトピックになっており,その中で心臓リハビリテーションの果たす役割についても注目されてきていることから,項目として取り入れて解説した.

血行動態が安定し安静時の症状がなければ,静注強心薬投与中にリハビリテーションを介入することは多々多いと思います。γだけで判断はできないですよね。まだ、RCTの報告はないみたいですが介入研究では有害事象は少なく実臨床と同様な結果がでているみたいです。

静注強心薬投与中が一番曖昧な介入だったため、記載されてよかったです。

5)今後の課題と展望として,回復期での心臓リハビリテーションのあり方,在宅医療・地域包括ケア・緩和ケアとの関わりを挙げた.また,新型コロナウィルス流行禍に伴う,外来や維持期心臓リハビリテーションの新たな模索として,遠隔医療の項目を加えた.

 最近は緩和ケアをより重要性を感じていて、ガイドラインに記載されてどこの施設でも感じているのかなっと実感しました。心臓リハビリテーションは遠隔医療に繋げやすい印象はあるため、今後すすんでいくかと思います。

 

今回の「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2021年)」はより心臓リハビリテーションに関する方には必携だと思います。約150ページもあるため多いので少しずつでも読めるといいと思います。

心臓リハビリテーションに関するおススメの本

 

心臓リハビリテーション必携

 これはAmazonなどにはなく、心臓リハビリテーション学会HPにて購入できます。大まかに心臓リハビリテーションを理解するにはいいと思います。ざっくり生理学も含まれているので機序なども多少は理解できます。

 ただ、情報が少し古いので、新しいガイドラインを併用したほうがいいです。

CPX・運動療法ハンドブック 改訂4版 心臓リハビリテーションのリアルワールド 心臓リハビリテーションのリアルワールド 

 CPXはない施設もあると思いますが、運動負荷などの時の反応なども記載しておりためになります。心臓リハビリテーション指導士を取得予定の方は必携だと思います。

 

わかる!できる!心臓リハビリテーションQ&A

 内容はQ&Aの形で、120項目なので様々な範囲が含まれています。1項目2~4ページぐらいなので浅くて広い感じですがわかりやすくなっています。浅く広く勉強するにはおススメです。文献も記載されているため、深く知りたい場合は記載されて文献を読むと理解できます。

 

心臓リハビリテーションポケットマニュアル

 ポケットマニュアルで臨床中に少し気になるときに見れるようにポケットサイズなのでおススメです。ただ、内容としては少し浅いので深く知りたい場合は成書をみることをおすすめします。

本ではないですが各種ガイドライン

 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年)

 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2021年)

 

わたしは本を買っても読み切れずにいます。なのでまずはガイドラインを先に読むことをおススメします。