呼吸器疾患患者などの息切れと日常生活動作とこつ
今回は呼吸器患者さんの日常生活動作について書いてみます。
日常生活動作とは
ひとりの人間が独立して生活するために行う基本的な、しかも各人ともに共通に毎日繰り返される一連の身体動作群
簡単に言うと、皆さんが毎日生活するなかで行ったり、しなくてはいけない動作のことをいいますかね
なんで日常生活動作なの?
呼吸器疾患患者団体のアンケートによると日常生活に望むこと
1位:息切れを気にしないで生活したい
2位:入院しないようにしたい
3位:もっと気軽に外出したい
どの日常動作で息切れを感じるか?
・在宅酸素・人工呼吸使用者
食事,着替え,入浴,歩行,荷物の持ち上げ,
階段昇降
・非使用者
歩行,荷物の持ち上げ,階段昇降
在宅呼吸ケア白書2013より
どうして動くと息が切れるの?
運動は筋肉でエネルギーを必要とするために、細胞がエネルギーをつくることにより酸素を多く消費します。肺からの酸素の取り込みを多くしようとするため肺の空気の出し入れが必然的に大きくなります。
運動と換気の関係
息切れの発生に関与する受容器
化学受容器=血液ガスの変化(PaO2、PaCO2)
機械受容器=肺伸展受容器、C線維受容器、肺伸展受容器
呼吸に関係する筋肉(呼吸筋)
呼吸では横隔膜と肋間筋のごく一部のみの筋肉しか働きませんが、努力的な呼吸となると以下の筋肉をつかいます。
- 斜角筋(首元の筋肉)
- 胸鎖乳突筋(首元の筋肉)
- 僧帽筋(首から肩の筋肉)
- 広背筋(背中の筋肉)など
呼吸筋の疲労
呼吸器疾患などの病気になると呼吸するのに呼吸に関する筋肉がより努力的に働く。
➡何もしないのに常にマラソンや走ったあとのような努力的な呼吸になってしまう。
努力呼吸が続くと・・・・・
息切れの発生メカニズム
実は・・・・・
息切れは主観的な感覚なこともあって完全には解明されていないんです。いくつか説がありますが
中枢‐抹消ミスマッチ説
呼吸中枢から呼吸筋への運動指令(出力)と受容器から入ってくる求心性の情報(入力)との間に解離あるいはミスマッチが存在する場合に息切れが発生するというもので一定量の換気を起こすのに、予想以上の大きい呼吸筋の活動が必要とされるときに生じるというもの
息切れの悪循環
日常生活動作の具体的なもの
①整容動作(洗顔、歯ブラシ、整髪、爪切り、お化粧)
②排泄動作(トイレ・後始末)
③入浴動作(洗髪・洗体・服の着脱・浴槽の出入り)
④更衣動作(衣服の着脱)
⑤食事動作(噛む・飲み込む)
⑥家事動作(掃除・洗濯・調理等)
⑦階段昇降
息切れを誘発しやすい動作
・腕を上げて行う動作
例えば・・・・
- 両手での洗髪
- 洗濯物をほす
- 上着を着る
腕を反復して行う動作
例えば・・・・
- 洗体
- 雑巾での床拭きや浴槽の掃除
- 掃除機をかける
胸やお腹を圧迫するような動作
例えば・・・・
- 座って体を曲げながら靴下や靴を履く。
- 座ってズボンをはく
- 足の爪をきる
息をとめる動作
例えば・・・・
- 洗顔
- 排便等のいきみ動作
- 会話
- 食事等の飲み込み
日常生活動作の息切れしないためのこつ
①整容動作のこつ
- 椅子に座って行いましょう。
- ゆっくり歯ブラシを動かす。または電動を使用する
- うがいとうがいの間に休みを入れる。
- 洗顔の時は息を吐きながら休みを入れる。
②排泄動作
- 便器に座ってまず一休み
- 排泄時は息を吐きながらゆっくりと圧をかけましょう
- 休んでから後始末をしましょう
③入浴動作のこつ
- 休んでから着替える
- ゆっくり大きく洗う
- 高めのイスを使用する
- 長めのタオルを使う
- 片方の腕だけを挙げて洗髪
- 浴槽の中でもイスを使用する
- 無理せず手伝ってもらう
- シャワーを利用する
④更衣動作のこつ
- 呼吸に合わせてゆっくり行う
- イスなどに座って着替える
- 靴下やズボンは足を組んで行う
- 腹部への圧迫を減らす
- 無駄な動作を省く
- 衣服の形態を選ぶ
⑤食事動作のこつ
- 息苦しい時は机に肘をついて休憩をとります
- ゆっくりとすこしずつ食べる
⑥家事動作のこつ
掃除
- 座って片づけられる物から片づける
- 休みを多く入れる
- 簡易な掃除用具を利用しながら計画的に少しずつ
洗濯
- 洗濯ネットなどを利用してからまらないようにする
- あらかじめ椅子などに座ってハンガー等にかける
- 干しやすい高さの物干し用具を使用する
- 呼吸にあわせてゆっくりと干す
炊事
- 台所に椅子など置きましょう
- 使用頻度の高いものは取りやすい位置に置きましょう
- 在宅酸素を使用している方は電磁調理器へ変更し、電子レンジなどを有効活用しましょう
⑦階段昇降のこつ
- ゆっくりと上り下りをする
- 昇降時に呼吸をあわせる
- 階段を使わないように環境を調整する(寝室を2階から1階へ変更する)
※難しかったら… とにかく吐くのを長く!!
階段では吸う:吐く=1:2~4
日常動作時に苦しくなったら
- まずは休憩する
- 自分の楽な姿勢をとる
息切れの自己管理するための基本原則
①息苦しくなる動作を理解する
②息切れに慣れる
③自ら呼吸を整えることを覚える
④負担のかからない動作の方法や要領を工夫する
⑤ゆっくり動作を行う
⑥休息のとり方を工夫する
⑦計画性を持った余裕のある生活リズムを確立する
⑧低酸素血症が強い場合は酸素吸入を行う(医師に相談)
⑨居住環境の整備、道具の利用
息切れの軽減が期待できる方法
①呼吸の調整:
口すぼめ呼吸、呼吸コントロール(リラックスして腹式呼吸)。深呼吸などの利用
②息こらえの回避と動作の要領習得:
呼吸に動作を合わせて呼吸にあった動作のスピードで行う、呼気と動作の開始を合わせるなど
③呼吸と動作の同調:
途中で適宜休息をいれる、ゆっくりと動作を行う。息切れが生じない方法に変える、無駄な動作を省き簡単な動作にする
④姿勢の調節:
上肢で体幹を支える前傾姿勢や壁にもたれかかった姿勢は息切れの軽減に役立つ
⑤歩行器等の利用
⑥顔面への風
⑦機械的換気補助の併用:NPPVなどを併用する
⑧酸素療法:酸素療法の検討、酸素流量の検討
日常生活動作の息切れに対する基本的なプログラム
①日常生活の具体的な動作に対しての方法の修正
②コンディショニング
呼吸法(口すぼめ呼吸、腹式呼吸) 呼吸と動作の同調
③肩や腕の筋力強化
④胸郭の可動性や柔軟性・ストレッチ
⑤環境調整
まとめ
息切れと日常生活動作について書きました。息切れ自体のメカニズムはいくつか説はありますが、はっきりとはしていません。しかし、具体的に動作を工夫することで息切れが楽になったりします。それだけで普段の生活が楽になったり、QOLもあがったりします。あらためて日常生活動作にめを向けることも大事だと思います。